●『ヘルピング法』
NEXTBASE

『ヘルピング法』は、アメリカのカウンセリング心理学者のロバート・R・カーカフによって提唱された。カーカフはあえてカウンセリングという表現をとらず「ヘルピング」と命名しています。これはカウンセリングというと、どうしてもカウンセラーという専門家とクライアントという来談者というように両者の固定的な役割イメージが出来上がってしまう。今日は部下のヘルパーになった課長が、明日はヘルピーになって部下からワープロの扱い方を教わることである。今日はヘルパーの教師が明日はヘルピーになって生徒に『この学級はどうしたらもっとまとまるようになるだろうか』『ぼくの教え方の改善点はどこだろうか』とヘルプを仰ぐ図がカーカフにはある。つまりヘルピーとヘルピーは同じ仲間同士であるとの思想である。

 カーカフの『ヘルピングの心理学』の序論の始めには、下記のような記述がある。

「私たちは成長する潜在能力を持って生まれている。私たちはそれ以上の存在でもなく、それ以下の存在でもない。この潜在能力を開花させる方法を習得した者は、言葉で言い尽くせないほど豊かな、感動に満ちた人生を経験するであろう。成長する術を身につければ、私たちはどの方向に進出しても、また、何を企てても、望んだことを達成することができよう。他方、潜在能力を開花させる方法を習得しなかった人は、無意味な、悲劇に満ちた人生を送ることになるのである」

 私たちはどこかで読んだことのある内容が書かれている。

 体系的に展開されたクライエントの洞察に行動計画を補うと、クライエントは最も効果的に活動できるようになるのである。同じように、うまく組み立てられた行動計画に、深められた洞察が結び付けられ、両者が統合されると、最大の効果を収めることができるのである。つまり、人生における人間の成長発展は、以下のように進むものと考えられる。

   洞察 → 行動 → 洞察 → 行動(以下無限に続く)

 援助技法の革新的な発展は、援助の効果についての調査研究から生まれたものである。基本的には、援助の効果は、2つの要因、つまり、応答技法と行動化への手ほどき技法から導き出されることが分かったのである。
 応答技法とは、ヘルパーが、ヘルピーの思考の枠組みに入り、ヘルピーの経験について自分が理解したことを正確にヘルピーに伝えることである。ここで重要視されるのは、ヘルピーの経験に対するヘルパーの共感、感受性、尊敬、暖かさ、そして、時には、その理解の具体性、明確性である。ヘルピーの応答技法は、ヘルピーの自己探索を促し、洞察を深めたり、拡げたりするのを助けるのである。

 次に、行動化への手ほどき技法は、ヘルピーの経験をヘルパーの経験というフィルターにかけることから始まるが、多くの場合、ヘルパーとヘルピーはその後一緒になって、問題の解決に至るすじ道をつかみ、その方向に進むきっかけをつくるのである。行動化への手ほどき技法において強調されるのは、ヘルパーの純粋性、素直さ、自己開示、分かち合いの精神、問題解決と行動計画設定の具体性、明確性、さらに、ヘルピーの言行に不一致が見出された時の指摘、直言などである。つまり、行動化への手ほどき技法とは、ヘルピーが自分の問題の解決に向かって行動を起こし、目標に突き進むのを助けることである。援助の過程において、応答技法と行動化への手ほどき技法は、両々あいまって、ヘルピーが洞察から行動に向かって進むのを助けるのである。

 くらし、学び、しごとの場における広範な調査と面接の結果、援助の過程は更に洗練されたものとなった。 
事前段階 第一段階 第二段階 第三段階
ヘルパー かかわり技法 応答技法 意識化技法 手ほどき技法
↓ / ↓ / ↓  / ↓
ヘルピー 参入 自己探索 自己理解 行動化
↑ ↓
フィードバック


参考文献


『ヘルピングの心理学』  ロバート・R・カーカフ著