講座18:慈愛を高める (続き)
日本でEQが話題になった背景はその当時の凶悪な殺人事件、強盗事件の頻発や、学校におけるいじめの問題や、離婚の増大、親子の断絶、家庭内暴力といったことがありました。
そして、現在はIQが高いだけでは仕事が円滑に行われなくなってきました。また想像的な仕事も増えてきました。さらに、仕事も個人プレーよりもチームプレーが多くなりました。かつてのような、知識や技術といったことではなく、自分の感情をうまく操ったり、周囲のひととの協調性などが重要になってきたため、指導的なポストにいるひとにとっては、また、一般の社員、管理職にとってもEQは欠かすことの出来ない能力として浮上してきました。「
指導的なポストにいるひとにとっては、部下のやる気をこさせるリーダーシップが求められ、そのために部下の気持ちを十分に察してリードする能力が必要です。
また、一般の社員、管理職にとっても、これからは専門的な知識、技術とともに、協調性、チャレンジシップ、リーダーシップなどのEQを高めることが重要な要件となります。
@自分を見つめ、感情を適正な状態にコントロールする知性、
A自分の考えや気持ちを上手に相手に働きかける知性、
B相手の様子や立場を理解する知性の3つを8つの能力、 24の素養
でアセスメントしたEQ適性テストがあります。
感情(資質)と行動という2つの面をわけて考えるとよくわかります。おこったら、がーがーっと爆発して言ってしまう。これは動物的で、とてもEQが高いとは言えません。ちょっとまてよ、と、感情から行動へのワンステップが置けるかどうかです。
EQの「資質」は、一般的に思春期の終わりごろまでの生活環境や教育によって決まります、しかし、努力によって確実に資質は高まり、「行動」に表すことができるようになります。
でも、EQをそうしたシステマティックにとらえる以前に、慈愛という言葉でとらえてみたいと思います。こころの豊かさ、人格、人間性、人柄、度量です。
つまり、感情そのままが良い行動という構図です。言葉を変えると、わがままとして相手にやさしくなるということです。(→次項「わがままなやさしさ」)
EQ適性テストとダブりますが、ダニエル・ゴールマン氏はEQ能力を次のように定義しています。
・自分の本当の気持ちを自覚して、こころから納得できる決断を下す能力
・衝動を自制し、不安や怒りなどのストレスのもとになる感情を制御する能力
・目標の追求に挫折したときでも楽観を捨てず、自分自身を励ます能力
・他人の気持ちを感じ取る共感能力
・集団の中で、調和を保ち協力しあう社会的能力
です。
これを見ると、これは古くて新しい概念だという目で見ることができます。つまり、自制心や、思いやり、協調性は日本人の生活の基盤だったということです。むしろ、アメリカがこの価値観を評価し、日本にEQとして逆輸入されたという考えかたもできるということです。
EQは自分の感情を認識し、自分の感情をコントロールし、他者の気持ちを認識し、人間関係を適切に管理します。
慈愛というのをあげたのは、EQの資質を高めるこころの持ちかたの5つの姿を広く「慈愛」と捉えたほうが、コーチングに活かしやすいからです。
「慈愛」と捉える前に、こまかく、EQを分けて狭く捉えていきます。
EQの資質を高めるこころの持ちかたの5つの姿とは、
・素直な心を持つ
・感謝の心を持つ
・プラス発想のこころを持つ
・利他の心を持つ
・目標を掲げ、積極的な心を持つ
という姿です。
これらは箇条書で説明しておきます。
・素直な心を持つ;聞く耳を持つ。「私はまだ足りないのだ」という気持ちが大切。だれに対しても耳を傾ける心をもつ
・感謝の心を持つ;感謝の気持ちをもつと、強いエネルギーがわく。「仕入先も大切なお客さま」といった、上下や金の動きにかかわらない感謝の発想を忘れない。「自分以外はすべてお客さま」という感謝の気持ち。感謝のこころは健康にもいい影響をおよぼす。
・プラス発想のこころを持つ;同じものを見ても見方が異なる発想。成功者はプラス発想を実践したひと。人生の9割はひとの受けとめかたで決まる。困難は天が与えてくれた試練。プラス言葉をすすんで使う(楽しい、まだこれだけ時間がある。なんとかやればできそうだ。よかった。運がよかった)
・利他の心を持つ;ひとを幸せにするひとが幸せになれる。利他のこころはひとを大きくする。隠れた部分でいかに努力することができるか。
・目標を掲げ、積極的な心を持つ;未来は目標と努力の大きさで決まる。
というわけです。
ここからは、EQの専門的な分野に入りますので、わかりやすいように「慈愛」で捉えていきます。慈愛として捉えると、セルフコントロール力(とくに激情の奴隷にならないとか)、思いやり、感受性、言葉での思いやりなどのEQにとって大切なものを、意識することなく持つことができるからです。
続く
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